アニメやマンガでは、しばしばヒロイン(ヒーロー)がピンチに陥るシーンが描かれる。ふつうに考えると視聴者は悪役に対して「何てひどい、〇〇がんばってくれ!!」と思わせられる、作品の見せ場に違いない。
ところが、そのシーンに「味方が負けてしまったら、どうしよう」というドキドキとは真逆に、やられている姿に愉悦を伴う興奮を覚えるのが、“リョナ”や“ヒロピン”と呼ばれる性癖だ。そして、その状況を求める人々は通称”リョナラー”と呼ばれる。
そもそも、この”リョナ”とは何なのか。またどのような心理から、それを求めて行くのだろうか。この記事ではマジメに、それでいて誰にでも分かるように、かみ砕いて解説したい。
さまざまな属性に枝分かれするリョナ
対象が攻撃や刺激を与えられ、悶えたり喘いだりする姿にゾクゾクするリョナは、サディズムやSMの“S”に近い性格があると言える。

そうは言っても、すべてを一括りにはできず、むしろその属性は細かく見れば、追い切れないほど多種多様に枝分かれする。
例えば魔法少女のようなヒロインがピンチになるシチュエーションに興奮する“ヒロピン”が有名だが、ドラゴンボールの主人公である孫悟空のように、男性のヒーローがやられるシーンに、興奮するリョナラーもいる。
また、どちらか一方ではなく両方とも好むケース、あるいは2次元のみならず、戦隊モノのような実写作品にゾクゾクを覚える場合も。
そしてリョナラー自身も、男女の性別を問わずに存在するため、それぞれに名称をつけようとすれば、新語とその定義を山ほど作らなければならない。
ソフトとハード、また自らクリエイトする人の存在
「属性が多すぎる」と言っても、それだけではふわっとしたまま終わってしまう。そこで、あえて大別できる2つをご紹介したいと思う。

①ソフトリョナラー
同じヒロイン(ヒーロー)のピンチと言っても、触手やスライムに巻きつかれて拘束、巨大な敵にギリギリッと握りしめられて悶える、電撃や打撃を喰らうなど、シチュエーションはさまざまだ。
しかし“ソフト”と付く通り、対象が本当に死んでしまうほどの攻撃は、望まない。また血がたくさん出る描写も、苦手なケースが多い。
あくまでも、ヒロイン(ヒーロー)の反応が垂涎ものであって、最終的には助かったり、反撃して勝利する流れに安心するソフトリョナラーも多い。
②ハードリョナラー
こちらは名前の通り、前述のソフトリョナよりも、より激しい攻めを好む性癖になる。ヒロイン(ヒーロー)が剣で突きさされたり、腕が斬り飛ばされるといった、身体の損壊。
致命傷や死亡シーンも好み、血の描写も激しいシチュエーションに、愉悦を覚えることが多い。また人によってはソフトかハードかのどちらかではなく、両方が好きな場合もある。
また、多くのリョナラーは既存の作品に興奮シーンを見出すが、それらを編集して愉しんだり、自ら作品を生み出すクリエイティブな人々も存在する。
たとえば格闘ゲームで、片方が一方的にやられるシーンを演出して編集。アクション系ではなくても、RPG等で攻撃を受けた時のシーンを集めたり、悲鳴ボイス集を作ったりするといった、楽しまれ方もある。
最近ではMMDなど優れたツールも増え、それらを駆使して好みの場面を作る人も、増えてきている。
なぜリョナラー心理に目覚めるのか?
まず、あくまで世間一般の価値観として「苦しむ姿に、愉悦を覚える」と言えば「対象が嫌いだから、ひどい目にあって喜ぶのか」と考えそうだが、ここが不思議かつ面白い所で、むしろ正反対なのだ。
ほとんどの場合、対象キャラのことは大好きで愛おしい。そんな相手だからこそ、普段は見せないような顔や声を見たくなる。
またやられるときの悶え顔や悲鳴は、エチい行為をしている時の喘ぎ声にも似て、興奮を高められる。
これが、もし嫌いなキャラのやられシーンであれば、まったくゾクゾク感がなく、ただ「いい気味だ」と思うだけに過ぎないだろう。
例として人気ゲームを元にしたアニメ、『デビルサバイバー2』のヒロイン、新田維緒(イオ)のヒロピンシーンを見てみる。

彼女は控え目な性格ながら思慮深く、それでいて天然な所もあって愛らしい、人気ヒロインだ。
そんなイオが首締め攻撃で喘ぐ、リョナシーン。作品の中で首を締められるなんていうシチュエーションは、他にはない。だからこそ、初めて見せる反応に「彼女がこんな表情するんだ、声を出すんだ」という、好奇心にも似た心理が働く。

そして「もっと強めたら?違う刺激を与えたら?、いったい、どんな反応するんだろう」と想像すれば、より興奮は高められる。
リョナラーとしてはイオが好きだからこそ、とくべつな姿を眺めたいし、そうして見せる姿も可愛らしく、ゾクゾクしてしまう。このSMにも通じる興奮を、ファンタジーに求めるのが、リョナ心理の根底にあると言えるだろう。
リョナは特別な性癖なのか?

結論からいうと、世の中に自覚があるかどうかは別にして、Sっ気とMっ気がある人がいるのと同じ感覚で、リョナもすごく特別な性癖というわけではなく、筆者も自己嫌悪する必要は無いと考える。
また前述の項目で「愛情の裏返し的な心理」と述べたように、リョナラーが現実の人を傷つけたり、残虐な性格とイコールになるわけではない。あくまで仮想のシチュエーションを愉しむのが、メインだ。
ただ認知度はそこまで高くはなく、漫画やアニメ文化の広まりによって誕生した、新しいタイプの属性であるため、知らない人や自覚の無い人からは「何それ」と奇異な目で見られる可能性もある。誰にでもカミングアウトするのは、現時点ではあまりおススメは出来ない。
ただ大きな視点で見れば、日本には江戸時代から葛飾北斎が描いた、女性がタコの触手に絡まれる浮世絵だって存在する。

リョナも今、この時代にまったく新しく誕生したのではなく、もともと人間が持っている性質が、表に出るかどうかの違いだと筆者は考えている。
そして筆者のペンネーム通り、世の中には「巨乳好き・貧乳好き」「足フェチ・二の腕フェチ」などなど、あまりに多様なフェティシズムが存在している。リョナもあくまで、その数ある1つと言うことができるだろう。
仮面を上手く使いこなそう

そのむかし、ヨーロッパなどでは『仮面舞踏会』というイベントが、流行った国がある。互いにどこの誰か分からない状況で、中には危ない出会いや遊びを、楽しんでいたとも伝わっている。
どれだけ時代が進もうと人間の本質は同じであり、誰しもオモテとウラの顔があるのだ。むしろ、そのことを見て見ぬふりする方が、現実世界で重大な悲劇をもたらすケースもある。
折に触れてニュースでは、有名な教授が痴漢で逮捕されたり、芸能人が性的なスキャンダルで、人生の積み重ねが台無しになっている。
その一因は自身の裏を上手くコントロールできず、誰かに迷惑をかける形で爆発してしまったようにも見える。
リョナラーもそうだがその他の性癖の持ち主も、さまざまなコンテンツを、依存し過ぎないレベルで利用し、ストレス発散に繋げる方が、心は健全に保たれると感じる。
どのような人も現代の仮面を上手に使い分け、人生を豊かに過ごすことができたら、それが何よりの形に思えてならない。
